名木宏之ブログ② コラム「風媒花」
【コラム】 風 媒 花 文/名木宏之 (なぎひろゆき) ――もくじ(抜粋掲載) ―― 田村正和さん、逝く/拝啓 小池百合子さま/ビートルズ自慢/My Favorite Songs(Karaoke)/縮れっ毛のこと/白物おでん/梅 【名木宏之/プロフィール】 文筆家・出版プロデューサー。1944年広島生まれ。広島大学理学部(数学科)在学中はボート選手として活躍する一方で著作をはじめ、4年時に中退。東京の業界紙記者・コピーライターを経て出版社・日本文芸社に入社し、雑誌編集部のち書籍編集部に勤務。74年に独立して著作するかたわら出版プロデュース、アートディレクションを手掛け、多くの話題書・ベストセラーを生み出すとともに、国内外で新雑誌8誌を世に出した。キャリアを通して複数の筆名を用い本名での活動は少ない。亡妻(1990年没)との間に1男1女 。 本欄メール shoubunn@gmail.com 田村正和さん、逝く え っ、と思った。 さっきテレビで俳優の田村正和が亡くなったことを割り込みで報じていて、そのことに驚いたのはもちろんだけど、「享年77」と耳に入ってきたから、あれっと思ったのだ。だめだよ、訃報で年齢を間違えては。 ところが何十分か後にちゃんとニュースで聞いても、やっぱりテレビは77だという。 そうか、間違えていたのは自分のほうだったのか。私は初対面から何十年もずっと彼を同い年だと思いつづけてきたものだから、ちょっと焦った。彼は一つ年上だったのだ。 そのことに気づく機会は何度もあったはずなのに、どうして……。私が7月生まれで彼は8月か9月生まれだったはずから、むしろ自分のほうが目上のように思ってきたのだ。 初めて会ったのは20代後半の若い頃で、昭和48、9年だったと思う。 品川プリンスホテルの喫茶ロビーで、そこを常宿にしていらっしゃった作家の柴田錬三郎さんと訪ねた横尾忠則さん と 私の3人でしゃべっていたところに、あの人(年上だと知ったらこの欄で「彼」と書き流せなくなった)が現れた。そしてぼそりとだけど丁寧に挨拶をし、そのまま同席することになったのだ。 「あのこは?」 しばらくして柴田さんが訊くと、「もうすぐ着くはずです」と田村さんは入...